こんにちは、KIYOです。
今回は、Huntercityにてストック・オプションについて学びましたので、得た知識をアウトプットしようと思います。講師は、元ゴールドマンサックスで、現在プルータス・コンサルティング常務取締役の岡田さんです。未知の領域で難しい内容でしたが、企業を成長させるための有効な戦略ですので、是非お付き合いください。
目次
ストック・オプションとは
ストック・オプション(以下、SO)とは、報酬として無償付与する新株予約権を指します。もらった人は、ある条件(企業の段階目標)を満たしたら、SOの権利を行使出来ます。
簡単に言うと、企業が役員や従業員に対して、未来自社株が上がった時に、今の株式時価の値段で買える権利をあげますよ、という仕組みです。(以下図、参照)
流れは、
①会社がSOを発行、②株価が上がり、SOもらった人が権利行使(発行時の金額で株を買う)、③株価がさらに上がった後売る→差額をゲット(キャピタルゲイン)
といった感じです。
しかし、早くSOをもらった人が得し、あとからもらった人はあまり旨味がないという側面もあります。
SOの目的として、
経営者⇛「SOを渡して会社のために頑張ってほしい!」
付与対象者⇛「条件突破(目標達成)できたら儲かるので頑張る!」
といった狙いがあります。
失敗あるある
しかし、両者に利益がありそうな話ではありますが、簡単にそうはいきません。実際に、多くの企業がSO成功したと胸を張って言えていないのが現状です。
SO失敗あるあるとして、
- SOを渡した人がぜんぜん貢献しない
- SOの発行規模を間違えた
- 低い権利行使価格で発行したのに対象者に感謝されない
- SO出したのに、社内の雰囲気が期待するほど変わらない
- SOを渡した人が引き抜かれてしまった
- SOの税務を考えずに出してしまった
などが、多く見られます。
経営側が、必ず得するというわけではなく、損をする可能性が高いのです。
SO=錬金術✗
失敗する可能性は秘めているものの、やはり企業の価値をあげていくためには有効な手段であることは間違いありません。
「SOいっぱい発行して、いっぱい頑張ってもらえばいいじゃん!」
という声が聞こえそうですが、SOには上限があります。何故かというと、株の希薄化を招いてしまうからです。
《株価の価値の算出》
SOなし: 時価総額/株数=株価
SOあり: 時価総額+{SO発行時点の株価(激安)✕SO発行数}/株数+{SO発行株数(株数の10〜15%くらい)}=株価
SOありの場合、極端に言うと、分子↑/分母↑↑↑ みたいな構図になるので、株価が希薄化していまいます。これでは、顕在株主が損してしまいますよね。ということは、投資家から見たらマイナス要素となりますので、経営側も「SO使いにくいな。。」となってしまいます。
しかし、この付与の上限があるために、「貢献している人に多く出したいけど出せない」「貢献していない人に多く出してしまって余りがない」などの問題も出てきます。
失敗しないためには?
SOを失敗しないためには主に考えることは3つあります。
- 事業計画にあった対象者を考える
- 将来の時価総額を念頭にタイミングを考える
- 経営者と対象者のSOの理解を深める
といったことを考えた上で、SOを発行する必要があります。
SOの課題とは
課題は2つ挙げられます。
- 税制価格要件のクリア
- 付与対象者の理解不足
税制価格要件のクリア
税制価格要件を満たすと、キャピタルゲイン(売却金額−払込金額)に対し、譲渡所得課税のみで済みます。税制価格要件を満たさないと、権利行使時(株を安く買うとき)の株価上昇分の差額に対し給与所得課税が適応されて、多く課税されることになります(株を売るまでに更に上がった分の差額は譲渡所得課税)。
しかし、税制価格要件を満たすことはかなり難易度が高いため、結果、要件を満たさないことが多いようです。
付与対象者の理解不足
対象者はタダでもらえるので、SOの価値を理解せずにもらってしまい、たいして頑張りもしないという、謎の状況になってしまいます。これは会社にとっても投資家にとってもマイナスでしかありません。
これらを解決するために、有償ストック・オプションが考えられました。
有償ストック・オプションとは
無償SOの場合、対象者に無償で渡すため、給与所得課税となっています。しかし、有価SOは対象者に買ってもらう(=等価交換)のため、企業に対する投資と同じような形になります。ということは、譲渡所得課税として扱うことができます。また、投資取引なので、対象者も理解しようとし、損したくないので企業に貢献しようとします。
時価発行新株予約権信託
しかしながら、従来のSOでは、企業の各社員が実際に果たした貢献に必ずしも報いることができないという課題が残っています。この課題を解決するために出来たスキームが『時価発行新株予約権信託』です。
新株予約権の払込資金を有する信託(受託者)に対して、発行会社が新株予約権を発行します。信託にて新株予約権をプールさせておき、一定の条件を満たしてから対象者に交付するという流れです。
最初に法人課税を払うことで途中が非課税となり、最後売るときだけ譲渡所得課税が発生する仕組みになります。
また、新株予約権のプールにより『後決め』ができるため、個人のパフォーマンスを考慮した事後的な付与や、将来の入社予定者への実質付与が可能になります。例えば、信託を3種類設定し、
①マザーズ上場まで ②東証一部上場まで ③東証一部上場から2年間
と期間を段階的に決めて、対象者はその達成したポイント時点の貢献度に応じて付与を受けられるため、そのポイントに標準を決めて頑張ろうと思える仕組みになります。
上記が主なメリットになりますが、他にも多くのメリットがあります。
- 発行時点の時価=権利行使価格とした新株予約権を信託にプールできる
- 受益者は信託設定時に定めたルールに基づいて事後的に決定
- 受益者の確定により、受益者=新株予約者になり、この時点で受益者に資金負担がない
- 受益者にの税務は譲与所得課税のみ
- 株価上昇局面において、採用コストの実質的な削減につながる
- 資本政策の観点からも有効
- 株主の許容する希薄化の規模に合わせられる
- 付与対象者への意識付け・教育が可能
- リテンション効果
- 信託の複数設定により、インセンティブとして活用できる
従来のSOと時価発行新株予約権信託を比べたとき、上場までの権利行使価格とキャピタルゲインを時系列でみてみます。
「早くSOもらった者勝ち」、「貢献したのに対してもらえない」、といったことが解消され、どのタイミングで頑張ったとしても、公平なSOの恩恵を受けることが出来ます。
まとめ
今回は、SOの基礎とその課題、さらに新しいスキームについて学びました。経営者と社員がWIN/WINの状態であるために、双方のSOへの理解はかなり重要だと感じました。少しでも、SOの理解が出来たのであれば幸いです。今後もどんどん学びを発信していきます。乞うご期待!
コメント